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CEOメッセージ

成長戦略の中核にある
人財の力を高め
医療業界に多様な
価値を提供する
ソリューションプロバイダー
を目指す
代表取締役社長 
最高経営責任者(CEO)

川久保 秀樹

変革に向けた新たなステージ
「第二創業期」に込めた意思

ホギメディカルは1961年の創業以来、医療の安全や病院経営の合理化・業務の効率化に資する製品・サービスを開発・販売してきました。1964年に院内感染防止を目的として販売を開始した「メッキンバッグ」に始まり、医療用不織布製品や手術用キット製品などの安定供給を通じて医療に貢献しています。

これまで当社は、創業家のリーダーシップのもとで社員が創意工夫を重ね、大きく成長してきました。2024年4月に非創業家である私が社長に就任してからは、強いリーダーシップが牽引するトップダウン経営から、理念や存在意義を求心力とする経営への移行を進めています。今後、当社がさらなる成長を遂げるためには、自立性に富む人財を育成し、持続可能な組織へと変革する必要があります。そこで、「継承すべきところは継承し、改めるべきは改める」という考えのもと、改革・変革への大きな一歩を踏み出しました。
当社は今、これまでとは全く違うステージに立っています。新たな価値創造には創業当時のような大きな挑戦が必要ですが、65年の歴史も尊重したい。そう考えると「第二創業期」という言葉がふさわしいと考え、覚悟を持って臨んでいます。

医療、そして人に貢献する
ホギメディカルの存在意義

当社の存在意義は、社業を通じて医療に貢献することにあります。それは第二創業期の今も変わりません。その思いを一層強くしたのが、コロナ禍での経験でした。
当社は、不織布製品をインドネシアのグループ会社工場で生産し、日本でキット製品に組み込んでいます。しかし、コロナ禍でサプライチェーンが混乱し、ガウンやドレープなどが世界的に不足した時期に、インドネシアの輸出入が制限されるという事態になりました。その時、「このままでは日本の手術が本当に止まってしまう」という危機感を覚えたと同時に、「このような時こそ、私たちホギメディカルの製品を手術室に確実に届けなければ」という強い使命感が湧き上がりました。
手術は患者さんご本人やご家族の人生において重大な局面です。失敗が許されないその手術の安全性を高める製品を、途切れることなく安定的に届けることが当社の使命であり、これ以上の社会的意義はないと考えています。

中期経営計画の実行に向け、組織改革・意識変革に注力

2024年7月、このような社会的意義を軸に、2025年3月期から3年間にわたる中期経営計画を策定しました。喫緊の課題は、「財務・資本収益性」「事業戦略」「ガバナンス体制」の強化です。この課題解決には、構造改革による強固な経営基盤をつくる必要があります。また、これらを実行する人財の強化も重要となります。

顧客価値の高い製品を安定的にお届けするためには、トップラインの回復が不可欠であり、改革の大前提でもあります。あるべき姿からバックキャスティングして考え、「営業組織の改革」「人事制度改革」が最優先であるという判断に至りました。まず、改革を推進する管理部門の人財および人財を牽引するリーダー層の増強と適正配置に着手するとともに、社員のエンゲージメントを向上するための人事制度改革を推進しました。これらの改革による新しい組織・制度は、2025年4月から始動しています。

並行して社員の意識変革を促してきました。これまではトップダウン型の意思決定のもと、社員はその実行に専念してきましたが、会社の課題や戦略の方向性、経営陣の意思などを全社員に伝える方針へと変更しました。社長就任以降、タウンホールミーティングでの対話やイントラネットでのメッセージ配信を通じて、できる限り自分の言葉で直接伝えることに努めています。
意識変革の兆しは徐々に現れています。例えば、社内の情報共有の速度とコミュニケーションの密度は格段に向上しました。日々の会話を通じて、じわりじわりと、変革を意識し自ら変わろうとする社員が増えてきたと感じています。この変化がトップラインの回復に直結するという単純なものではなく、課題もまだ残されてはいるものの、進む方向は間違っていないと確信しています。

実行フェーズでの成果を目指し、組織体制と人財をさらに強化

中期経営計画は準備期間を経て、2025年7月から事業戦略の実行フェーズに移行しました。アイドリングしていたプロジェクトを次々に始動させ、成果を出していく時です。
このフェーズでは適材適所を軸とした執行体制の強化が鍵であり、人財層に厚みを持たせていくことが求められます。そこで執行役員を大幅に増員し、スキルセットの充実を図っています。加えて、個々の機能と責任を一層明確化し、戦略を浸透しやすくするために本部制を導入しました。
営業部門は、各地域のセールス機能をバックアップするマーケティング機能を強化し、その人財を本社に配置しました。生産部門は、海外での販売拡充を視野に品質面や薬事面での管理体制を充実させました。サプライチェーンや品質管理に明るい専門人財を外部から招聘し、生産管理体制を増強しました。調達部門は、これまでは安定的な原材料確保を主な役割としてきましたが、コスト低減や利益率向上のためには、より上流から戦略的に関与することが重要です。そこで、交渉能力やコスト分析力、語学力に優れた専門人財を外部から獲得しました。また、グローバル事業の経験や知見、マネジメントスキルを有する人財も新たに採用しました。当社にはもともとユニークでタレントのある社員が大勢います。今後は社員の活躍や、経営・事業のファクトを社内外に発信する広報戦略も強化していく計画です。
ガバナンス・モニタリングについては、人財配置に関する成果や課題を社長である私が確認・評価し、さらに社外取締役からチェック・監督を受ける体制を整えました。強化した人財基盤と統制機能のもと、戦略を全力で推進していきます。

多様な選択肢で顧客ニーズに応えるソリューションプロバイダーを目指す

2035年のありたい姿として「日本・ASEANにおける医療進歩の一翼を担うオンリーワン企業へ/顧客視点に立脚し、価値を生みだすソリューションプロバイダーへ」を掲げました。事業戦略の実行フェーズで抜本的な構造改革を進めて成長と飛躍につなげ、ありたい姿の実現を目指していきます。
ソリューションプロバイダーとは、さまざまなアプリケーションが集約されたプラットフォームのようなものです。他社製も含め複数の製品やサービスを組み合わせて価値を提供するマルチベンダービジネスを磨き、病院経営や手術室運営に関するお客さまのニーズに対して、豊富な選択肢から最適なソリューションを提供することが一つのゴールです。

現在当社が提供する製品・サービスは、全国の地域医療の中核を担う医療機関で広く採用されており、すでにブランドへの高い認知度を獲得できています。この認知度と長年培ってきたお客さまからの信頼を基盤に、これまで以上に「HOGYに聞けばソリューションがある」と思っていただける存在を目指します。
その実現には、ニーズを的確に捉えた製品・サービスの提供が欠かせません。既存のアカウントを活かしてお客さまとの接点をより強化し、期待に応える新たな製品・サービスを開発することが目下の課題です。この課題を突破することが、業績向上のキーファクターと捉えています。

現在、手術室運営を効率化するシステム「オペラマスター」のサービスの拡充に着手しています。この製品の目的は、手術室運営にかかるコスト管理と、キット製品のスピーディーな供給体制の構築ですが、働き方改革に伴う医療従事者の業務負担軽減など、お客さまの課題は時代とともに変化しています。サービスラインナップを更新し、新たな課題を解決するためのソリューションを展開していきます。
例えば、手術手順書を作成し、クラウドサーバー上で時間や場所を選ばず学習できる「オペラノート」の新機能追加はその一つです。既存機能のコンセプトはすでに好評を得ていますが、サービスを拡充させるために、手術情報をもとにAIによる編集で教育動画を作成できる新機能の搭載を計画しています。手術手順書の作成機能との連携で、さらに顧客満足度の高いサービスに発展させることが可能です。
医療関連ビジネスを将来にわたり成長させるためには、全国の医療機関におけるシェア拡大とアカウント数の増加も重要です。サービスの進化でこれらの課題を解決し、ソリューションプロバイダーとしての顧客接点を強化しながら中長期的な成長へとつなげていく考えです。

株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまへ

中期経営計画では、3年間のキャッシュアロケーションを明確化しました。安定成長を基本として、まずは顧客価値や製品の付加価値向上に資する投資を進め、余剰資金は自己株式取得などを通じて株主還元に充てる方針です。当社はかねてより株主還元の拡充に注力してきました。その姿勢は第二創業期でも確実に継承していきます。

一方で資本効率の向上、特にROEの改善は重要な経営課題と認識しています。本業によって着実に利益を創出しながら、株主還元によってROEを改善させ、資本効率の向上を目指します。
利益創出の打ち手となる成長戦略を推進する上で、やはり重要なのは人財です。会社は人によって発展するものと考えています。今回の組織改革で外部から採用した専門人財に感化され、意識や行動がポジティブに変化した社員も大勢います。多様なスキルを融合させることで、触媒反応のように組織の変化が加速していることを実感しています。

社員の活力が高まり、明るく前向きな社風が醸成され、部門間の連携が深まることでクリエイティブな発想も生まれていくと期待しています。むしろ、それなくして将来の成長はありません。人財の力を最大限に発揮させることで顧客価値の高いソリューションを生み出し、持続的な企業価値の向上につなげていきます。ステークホルダーの皆さまには、これから進化を遂げるホギメディカルに注目していただきたいと思います。

代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)

川久保 秀樹

代表取締役副社長 最高財務責任者(CFO)

藤田 泰介