感染の基礎知識

感染の成立

感染とは、微生物が生体内に侵入し、生体内で定着・増殖し、寄生の状態になった場合を「感染した」といいます。感染が成立するためには3つの要素(感染の3要素)が必要です。

これら3つの要素のメカニズムは「感染の連鎖」と呼ばれており、この連鎖を断ち切ることが感染管理の原則になります。米国疾病センター(CDC)では、感染管理として以下分類にて具体策を示しています。

1. 標準予防策
2. 感染経路別予防策
3. 職業感染対策

感染対策

感染の原因となる微生物とは、普通肉眼では見えず、顕微鏡で拡大して初めて観察できる極めて微小な生物群です。この微生物によっておきる病気は、かつて「疫病」と呼ばれ、人間を長きにわたり苦しめてきました。医学の歴史は、ある一面において、この微生物との戦いの歴史ともいえます。

標準予防策(Standard Precautions)

1996年にCDCが発表した予防策で、「Standard Precautions」(スタンダードプリコーション)と呼ばれ、感染の有無に関わらず、血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜を介する、微生物の伝播リスクを減らすために、すべての患者に対して、下記の対策を講じる事を推奨しております。

1. 手指衛生
2. 手袋
3. マスク、ゴーグル
4. ガウン
5. 器具
6. リネン

感染経路別予防策

院内感染を防止するには、感染経路の遮断が中心となります。院内感染の感染経路には人・物・空気などがあります。

頭髪 キャップの着用
飛沫 マスクの着用
手指 手洗いの励行、手袋の着用
着衣 着衣の制御・滅菌
覆物 塵埃の制御
使用される器具 滅菌(無菌操作)されていること、ディスポ製品の使用
空気 HEPAフィルター使用による無菌室(クリーンルーム)

院内感染

院内感染と判断されるには一般的に次の要素があげられます。
1、感染に対して抵抗力の衰えている患者の増加
2、重篤な基礎疾患を有する患者・未熟児・新生児・老人など
3、抵抗力を低下させる治療法や検査法
4、免疫抑制剤・抗がん剤・カテーテル・大手術・化学療法剤
5、正常な防御機能の障害
6、手術・カテーテル・透析のためのシャント・気管切開
7、化学療法剤、第3世代抗生物質等の長期服用
8、多剤耐性菌の増加・日和見病原菌の増加
9、病室の構造と同室の問題、病院内の汚染
10、外部からの見舞客、医療従事者の問題
11、消毒剤あるいは滅菌法の選択の間違い その他

手術部位感染(SSI:Surgical Site Infection)

SSI(手術部位感染)とは、傷感染・腹腔内感染・腹腔内膿傷のことを指します。いずれも手術後30日以内(インプラントのある場合は1年以内)に起きた感染を言います。SSIにはドレーンからの逆行性感染や、呼吸器感染、尿路感染などの遠隔部位感染は含みません。

背景と米国の現状

SSIが注目されるにいたったのは、
1. 皮膚や皮下組織のみの感染ではなく、感染のリスクの高い『手術』という医療行為での手術部位感染を防止する。
2. 医療現場の『感染』に対する医療従事者および患者の意識変化
3. 1999年にCDCにて手術部位感染防止ガイドラインが発表された
などが背景としてあります。

米国ではCDC病院サーベイランスシステムNNIS(National Nosocominal Infection Surbeilance)により20年以上前からSSIのデータ収集が行われており、その膨大なデータが病院の感染管理指標としてフィードバックされています。その発表の一部では全米の入院患者の14~16%が感染しているとされ、発生部位は手術創部のみが3分の2、残りの3分の1は、手術を行った臓器やその周辺に発生しているとされています。また、SSIに罹患し死亡した患者の実に77%がこのSSIが原因だと報告されています。

予防策

手術部位感染を減少させるため、CDCでは、以下のような観点から臨床データに基づく手術野危険因子と予防措置を解析しています。 日本では、「手術医療の実践ガイドライン」の第7章で手術部位感染を防止するための具体的な対策事項が示され、SSIが一旦発生すると入院期間が延長し、医療費が増大して患者の手術治療に対する満足度が低下することから、多くの医療機関ではSSI発生防止に努めている。

   術後感染症防止の抗菌薬の使用法と選択
   患者の合併症の管理
   消毒と手術室の環境管理
   医療従事者の消毒・感染管理

ホギメディカルでは医療機関の「医療の質向上(良質な医療の提供)」と「病院経営」の2つの面から、
SSI発生予防に貢献する製品を各種取り扱っております。